鉄分不足と美容について【管理栄養士コラム】
貧血大国日本
日本における鉄分不足は深刻な状態であり、先進諸国の中でも明らかに悪く「貧血大国」と呼ばれるほどです。
WHO(世界保健機関)では世界的な栄養障害のトップに鉄欠乏症を挙げており、世界でおよそ20億人(世界人口の30%)が鉄欠乏貧血にかかっていると言われています。
ダイエットと鉄分
そんな世界的にも不足しがちな栄養素の鉄分が、実はダイエットに関わりがあることを皆さんはご存知でしょうか。
鉄分の一番大きな働きは身体全体に、酸素を運搬するヘモグロビンの材料となっていることです。基本的に脂肪も代謝には酸素が必要となるので鉄分が不足してしまうと、ヘモグロビンの量が減り、身体全体に十分な酸素を供給できなくなって、基礎代謝が円滑に行われない状態に陥って太りやすくなってしまいます。
またリパーゼという膵臓から分泌される消化酵素は、脂肪の分解を主な働きとする消化酵素です。このリパーゼは体内の酸素濃度が低いと働きません。
つまり鉄分不足の状態でダイエットをしても、効果が出にくくなってしまうということなんですね。
昔に比べて食が多様化し、偏食・欠食をする人や、必要以上のダイエットをする人も増えたような印象があります。そのような様々な影響があり日本人の鉄分摂取量は30年前に比べて、半分程度にまで落ちてしまっています。
ヘム鉄と非ヘム鉄
皆さんは食品中の鉄に種類があることをご存じでしょうか。
一つは肉や魚など動物性食品に含まれる「ヘム鉄」。
もう一つは野菜などの植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」です。
その吸収率を比べるとヘム鉄は15~25%、非ヘム鉄は2~5%となっています。実は日本人が食事から摂取している鉄分の大部分は、吸収されにくい非ヘム鉄であることが分かっています。鉄分と聞くとレバーに豊富に含まれているイメージがあると思いますが、レバー以外にも鉄分を多く摂ることのできる食品はあります。
ヘム鉄
獣肉類・・・牛肉 豚肉 鶏肉
内臓・レバー製品・・・内臓肉 レバーペースト
魚類・・・かつお まぐろ いわし
非ヘム鉄
卵
貝類・・・しじみ あさり
豆類・・・大豆 小豆 ココア
海藻類・・・ひじき のり
緑黄色野菜・・・ほうれん草 小松菜
鉄分と一緒に摂りたい物・摂りたくない物
鉄分を効果的に摂取するためには、吸収率の良いヘム鉄を摂取したり、非ヘム鉄とその吸収率を上げる食べ物を同時に摂って、バランス良く食事をすることが重要になります。赤ピーマンやブロッコリー、キウイフルーツ等に多く含まれるビタミンCは、鉄を吸収しやすい形に変える働きがあるので一緒に摂ると更に効果的です。
また胃酸の分泌が良くなることでも鉄の吸収率は上がるといわれています。胃酸の分泌を促す柑橘類やお酢、梅干しなどの酸っぱい食べ物を一緒に摂るのも効果的です。
それとは逆に、コーヒーや紅茶、緑茶等に含まれる「タンニン」は、鉄分の吸収率を下げるため、食事中に飲むのは控えましょう。
肌の治安維持にも必要不可欠な鉄分
ここまではダイエットと鉄分についてお話ししてきましたが、鉄分は美容にも必要不可欠な栄養素です。
鉄が不足することでコラーゲンの生成が促されなくなるので、肌は乾燥しがちになります。そうすると、過剰に皮脂が分泌するようになり、吹き出物やニキビが出来やすくなるなど肌荒れを引き起こします。さらに炎症を起こした皮膚が傷つくと、肌の損傷を回復しようとする防御反応からメラニン色素が生成され、シミとなって残りやすくなるのです。
まとめ
鉄分と聞くと貧血を思い浮かべる人が多いと思いますが、鉄分が不足したままダイエットをすると思うように痩せなかったり、綺麗な肌を保てなくなります。
ダイエット中もバランス良く食事をすることが大切なことは、皆さんもご存知かとは思いますが、それは炭水化物、脂質、たんぱく質の三大栄養素だけではなく、鉄分などのミネラルやビタミンなどの栄養素もダイエットに影響を及ぼすからなんですね。
ダイエット中だからといって食事の量を極端に減らすと、身体に取り込まれる栄養素も必然的に減ってしまいます。
バランス良く食事を摂って綺麗に痩せる身体を目指しましょう!
参考文献『一生役立つ きちんとわかる栄養学』飯田薫子・寺本あい監修
株式会社SHAREの管理栄養士2名によるコラムです。
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